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NIKKEI NET『電話加入権料を廃止、基本料も引き下げ』
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20010827CEEI017526.html
記事にもあるように4兆円前後の巨額の財産について,NTTが加入権料を自分のリソースのように振舞っている限り,加入権に関して期待できないと思われていたが,Webmasterの予想通り,結局NTT自身でこのような構造的な部分に改革できなかった形になってしまった。総務省(旧郵政省)大臣の指示がなければ動かないということである。
さて,今回の総務省の方針は支持できる。ただし後手ゴテある。この方針は電電公社が民営化されるタイミングか,もしくは市内網開放のタイミングで実施されるべきであった。規制緩和というのは大変結構だが,タイミングがこれでは筋が通らないのではないか。国民共通の資産というべき地域市内網は,今ではNTT1社のものではないからである。既に例えばプロバイダやPHS事業者は,この加入権料の負担が大きく,事業を圧迫した。
しかも加入権が廃止されても,いまさらという感は拭えない。携帯電話・IP電話・ADSLタイプ2が普及した後に加入電話の引き下げしても,魅力が今一歩である。逆にそれだけ相対的に携帯電話・IP電話の価値が増したので,高度通信利用者としては歓迎できる面もあるかもしれないが・・・。時代遅れのISDNの件を見ていても判るが,通信分野での改革遅れのおかげで日本の通信網資産の地盤沈下(不良債権化)が起こっていると言えるかもしれない。
今回の件は,公正取引委員会の権限をもっと強力にし,独禁法運用強化が必須であることが,通信業界という特性という面からも,ハッキリと解る事例のひとつとなった。構造改革が叫ばれているが,果たしてNTT改革がどこまで進むかに注目していたい。
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毎日インタラクティブ『住基ネットに独自条例求める答申 杉並区審議会』
http://www.mainichi.co.jp/digital/network/archive/200108/21/1.html
結局法律が制定されてしまっている以上は,導入しなければならないということである。実に予想されたことではあった。だからこそ他の全ての地方自治体が大した抵抗も無いままに,予算を付けていったのである。悪法とわかりきっていると言えども,現に制定されてしまっては,一役所としてその効力には逆らえないということか。杉並区の取り組みは,事務上は全くの無駄に終わったかもしれないが,区民やその他の市民に対しての影響を考えれば評価されるべきと思われ,今回の件で事勿れ主義と映っても仕方の無い他の自治体は,是非見習って欲しいところである。
さてこの答申だが,言いたいことはハッキリ明記してあり,住民基本台帳ネットワークシステムの問題点を誰が見ても解る形で指摘している。市民のためのシステムではないことがハッキリしたので,是非見ておくべきかもしれない。
これらの問題点をはらんだまま修正されることなく運用が開始されたとしたら,すぐに社会問題になることは既に目に見えている。
超党派で作成しているといわれている『住基ネットの運用を中止する法案』に期待するしかないのか。
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今夏は7月の記録的な猛暑によって、関東地方の主要ダムの貯水率が急激な落ち込みを記録した。
グラフを見てみると近年と比較しても急激っぷりが見て取れる。
・東京都水道局『水源情報 水系別貯水量の推移』
http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/pp/sessui/suigen_g.htm
ところでここで2つの注目すべき点が見えてくる。
◆1 洪水期利水容量って?
『洪水期利水容量』と呼ばれる最大貯水量の制限される時期が設定されている(制限水位ともいう)。
洪水期(7〜9月)には、ダム設計貯水率の74%〜80%弱で『満水』というものである。
つまり洪水期の貯水率というものは、ダムの本来の貯水率とは異なり、治水の側面から設定された運用上の貯水率となっているのである。
洪水期の貯水量は国土交通省が設定しているものである。洪水対策でダムに余裕を持たせるという趣旨の運用方針によるものだ。『首都圏の水瓶(ミズガメ)』という機能とは正反対の役割である。これが困った点である。渇水に備えて多めに(利水目的で)貯水すれば洪水対策が出来ず、洪水対策を重視すると水不足になる危険性が出てくるという仕掛けである。これは多目的ダムの宿命といえるもので、この方針で運用する限りは避けて通ることが不可能である。
さて、本当に洪水対策(治水)はダムでやらなければならないのだろうかという根本的な疑問にぶち当たる。長野の脱ダム宣言(http://www.pref.nagano.jp/doboku/tisui/shusi.htm)でもダムのみに頼らないという方針に切り替えるというのは記憶に新しい。世界的に見ればこのような治水に対する考え方はごく主流の考え方である。・・・となれば、洪水期利水容量を徐々に撤廃する方向で考えれば、渇水対策のための新たなダム建設は不要ということになる。
気象予測の精度向上やコンピュータ・ネットワークの導入によるより各河川の流量の計算が可能になったことで、より適切な時期により適量の放水が可能になり、実は洪水期に許容貯水量を超えるような危険な水位に達する可能性は『洪水期利水容量』をダム建設当時に設定した時よりも相当低くなっているようだ。
現に国土交通省は『ダムの弾力的管理試験』(http://www.river.or.jp/kawa/mi0107/004.pdf・http://www.river.or.jp/kawa/mi9709/p34.html)を実施しているようだ。少々取り組みを開始するのが遅かったような気がするが、本格的な『ダムの弾力的管理方法』による運用を開始できずにいれば、この渇水時に乗じてダム建設を促進しかねないわけで、総合的に治水・利水を見守ることが大事な時期といえる。
◆2 『にわか節水』の効果
普段大量の水を使う習慣があった人が、ある日突然気が向いたので、にわか節水をしたとする。『今日は400L(リットル)使う洗濯を頑張って節水したら、なんと10Lで出来た!』と大いに渇水対策に貢献した気になる。
さて、ここでの間違いを正確に指摘することが出来る人はどれほどいるだろうか。
解答として『確かに390Lだけダムの水を減らすことに成功したが、たった0.39立方メートルだろ? 2〜3億立方メートルのダムからすれば、結局まったく節水していなかったに等しいだろ』と言いたくなるかもしれないが、この解答は間違いである。
例え1000万人が、ある日気まぐれに100Lの『にわか節水』を全員同時に敢行したとしても、ダムの水の減る勢いは、計算上の100万立方メートルの節約になるのではなく、実に1Lたりとも影響はない。
我々が蛇口をひねった時に水が出るまでの過程を少し考えればわかることだが、ダムと蛇口の間には水道の他に『川』と『取水口(取水堰)』があるのだ。つまり『にわか節水』では取水口で浄水場へ入るところの水量を減少させるだけで、節水でできた余った分の水(取水口へ入るべきだった水)は、ただ単に川の下流へ(海へ)と流れていくだけである。
ダムから放水する水量は、普段の我々の消費水量を計算に入れて放水・管理され、その水は12時間〜2日程度かかって取水口に流れ着くので、にわか節水による需要の変化をダム放流時に予測することが困難であり、結果的にダム貯水率減少防止にはまったく貢献できないのである。
浄水場の取水口の下流に農業用水取水口でもあれば,にわか節水で急に発生した余剰分の水を有効活用できるかもしれないが,残念ながら東京の大部分の水を供給する3大浄水場(金町・朝霞・東村山→http://www.waterworks.metro.tokyo.jp/pp/hakken/h02.htm)の下流にはそれほど農業用地がなく,にわか節水効果で発生した余剰水は活用できない。
だからこそ、にわか節水で節水した気にならず,夏季の渇水時には『恒常的節水』を敢行する必要があるのである。
当面の渇水の危機が薄れた現在でも、水道局が『引き続き節水にご協力を』とアピールするのには、このような理由があるのである。
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NIKKEI NET『IT景気、携帯電話から失速感』
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20010802CNNI006101.html
ついに怖れていた事態が起こってしまったのかもしれない。
急速な成長を遂げてきた携帯電話市場がついに飽和した。出荷台数の伸びが止まりマイナス成長に転じたらしい。
怖れていたこととは,それを敏感に感ずることが出来ず,メーカー各社やサービス提供者が,これからも大需要あり/成長すると見込んで,増産・増員体制を敷いていたことである。つまり,既に携帯バブルははじけてしまったのである。
年間出荷量の3割に相当する在庫を抱えてしまっているメーカー各社,FOMA調整難でサービス開始が遅れ,また正式に開始しても当分は莫大な設備投資コストでいつ回収できるかわからないFOMAサービスを抱えてしまったDoCoMo・・・。
この事は「IT景気に失速」というくくりで見ることが出来るかもしれないが,日本文化の性質からして,新しいものに飛び付き,すぐ飽きるというパターンを繰り返しているに過ぎないということを,企業各社は学んでいない。
『携帯』はつまり,1つのブームであって,恒久的な価値ではない恐れがあるということである。『携帯』を一過性のファッションと捉えることも出来るからである。流行モノはすたれると,やがて消え失せてしまう性質を持っている。
いや,『携帯』には,大きな価値があることはもちろんだ。携帯電話のおかげで日常的な通話は場所の制約は殆ど無くなった。しかし,日常的に使い「聴覚の延長線上」にあるようなツールとしては,高い通話料・低い通話の音質ではペイできないと言う事なのではないだろうか。ブームに乗じず,高品位で安定的に提供なサービスを提供できるような規格と,もっと安価に提供するような努力が必要だったのである。いままでが単なるブームだっただけで,携帯バブルがはじけた今となっては,いたずらに高価だったということを知る必要があるだろう。
規格としては,FOMAは,現時点では軌道修正すべき最たるものと感じる。音声通信では,低価格でも成り立つシステムでなければダメである。FOMAのように非常に高くつくネットワークシステムを,計画通り1から構築していくとしたら,果たして投資費用を回収するまでにどれだけの通話料が必要なのだろうか。
FOMAの運の悪さは,携帯電話が飽和したタイミングにリリースされたということだけではない。高速データ通信をマーケティングの大看板として掲げてしまっているところにある。高速なデータ通信を音声通話を犠牲にせずに安定的に実現するには,現在の携帯電話(PDC)の基地局よりももっと高い密度で設置しなければ成り立たないため,FOMA投資コストはさらに膨らむ可能性があるのである。従って携帯バブルがはじけてしまった今,FOMAという規格そのものが日本の景気に大きく影響を与えてしまうということを指摘したい。
携帯電話が飽和状態に達したことを受けて,早くもFOMAの資金調達が難しくなってきているようである。以下のような新聞報道がこのタイミングで出ていることが,このことを暗に示している。
共同通信社・福井新聞『携帯の需要は5・7億台に ドコモ、予測を上方修正』
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=FKI&PG=STORY&NGID=AMAN&NWID=A0100210
共同通信社・静岡新聞・SBS静岡放送『「機械対機械」の通信拡大 ドコモ、新市場に照準』
http://flash24.kyodo.co.jp/?MID=SBS&PG=STORY&NGID=AECM&NWID=A2200210
最近のマーケットの動きはITに関して敏感である。もはや資金調達のための予測なのか。
非音声通信といえば,この記事によれば,DoCoMoは将来的に企業ユーザが家電や自動車などいろいろな機器に,FOMAのデータ通信機能を組み込んで利用し,10年後の時点で国内だけで5億台を超える需要があるという。あるいはMpeg4による動画像を配信するという計画もあるらしい。いずれにしても技術的な理由で,基地局数を相当多くしなければ実現しにくい。
これらは,いずれにしても単純なインフラに相当するわけで,ファッションとは無縁である。通信のバイト単価・スループット・サービスエリアが重要になるからである。無線で非音声通信という面を考えると,現時点で,基地局単価が圧倒的に安いPHSがあり,他にも非常に安価で高速通信が実現可能な無線LAN規格を利用したさまざまなサービスが名乗りをあげている現状がある。少なくとも2〜3年後を想像すれば,わざわざ単価の高そうなFOMAを採用する企業がどれほど出てくるというのか。全国統一規格のインフラというだけの理由で,DoCoMoの5億台という強気の数字が果たして実現するのかは大いに不安の残るところである(無線LAN規格はサービス層以外を見れば世界統一規格)。
今まで圧倒的な好調さを維持してきたDoCoMoも,バブルがはじけた瞬間から巨大ゼネコンのように,あるいはインフラ整備で巨額の有利子負債を抱えたままタバコ税でフタをされ続けている旧国鉄のように,不良債権化する恐れが出てきてしまったのではないのだろうか。
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