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IP電話で通信産業は変われるか
2001年12月26日(水)


▼日経コミュニケーション『加入電話から着信が可能なIP電話サービス NTT-MEが来年3月にも開始』
http://www4.nikkeibp.co.jp/NCC/news_top10/f_ncc2663.html


総務省が進めているIP電話へ割り当てられる電話番号体系が,早ければ02年2月にも決まるようである。加入者電話から着信可能なサービスが,にわかに立ち上がるようである。

着信問題が解決する見込みになったことで,IP電話に関する問題点は,早くもアプリケーションに焦点が移ってきている。

必要な機能や現時点での問題点を簡単に列挙してみると,以下のような要素があると思われる。
・IP電話機が高価。普通のFAX電話並(¥3〜5万)になるかどうか。
・既存の電話と互換性のあるFAX機能
・FAXにe-mail機能を統合
・Webページブラウザ
・コードレス子機
・留守番電話
・着信履歴(ナンバー表示)



と,こう考えていくと,L-mode端末を発展させたイメージを想像すれば,話が見えやすい。現在のL-mode端末をIP化するだけで,随分と使いでがあるように思える。(右の写真は,SHARP製の現行Lモード機のもの)

またこれまで,同時通話数は1回線につき1(ISDNでは2まで)で固定だったが,IP化されているために帯域とサービスメニューさえ許せば,上限を撤廃することが可能になる。つまり電話機の音声チャンネル数に依存することになるだろうが,例えば家族全員が同時に通話可能になる。また,留守番機能によって話中は無くなるかもしれない。少なくとも家族に必要な分だけ電話機を買えば,回線を新たに引いたりする必要などはなくなる。

上記の要素で,今のところ最も厳しいのは価格だろうか。しかし近年のルータのように,普及に伴うスケールメリットによって価格はこなれてくるわけで,Webmasterは近い将来にIP電話が導入できるのではと,密かに期待しているのである。

このようにIP電話に要求されるイメージは,かなり現実味があるものになってきたと言える。


もちろんPCそのものをIP電話機に仕立てるためのソフトを導入して安価に済ませるのも良いだろうが,PCを常に電源を入れておくことが必要になるし,サウンドデバイスのリソースが常に確保されてしまうことへの抵抗も考えられ,コンピュータが常に稼動するオフィス以外の一般的な家庭などでは,着信時に呼出音が確実に鳴る単体のデバイスが普及するというのは目に見えている。

まだ現実的ではないが,無線LANなどIP網を活用した携帯IP電話(PHSのような感じ)の端末も将来的には考えられていて,これから固定電話・携帯電話が急速に変革することが予想される。


巨額の網構築コストをかけて,音声専用のネットワークを整備する現在の状況は,電話のIP化が現実味を帯びてくるにつれ,既にギャンブルに近い印象が急速に出て来ていることに驚かされる。

コンピュータデータ/映像コンテンツのネットワークを構築することは,需要によって将来的にも約束されているものだ。それに音声データをちょっとだけ便乗させるという手法によって,音声通話に対するトラフィック面のコストは,ほぼ皆無に見積もることが出来るのがIP電話の最大最強のメリットである。

しかしながら,この流れが進むと通信業界にとってまさに『構造改革の痛み』をもろにうけることになる。収益構造を音声からデータへと,つまり通話による従量料金から,帯域その他の接続料による定額へと変えていかなければならないからである。しかも,IP電話によって電話市場そのものの縮小が予想以上に早まったとしても,データ通信の市場は電話市場の縮小を補うだけのキャパは有していない。もちろん電話会社側の理屈でそうはさせないだろうが,需要がなくなれば否応無しに変革は進むものだ。これからの音声通話+データ通信の事業に14万7千人も要らないのである。

このような巨大な産業が需要を見誤るとどうなるか。米国の大手の通信会社が(というより産業界全体が)需要を見誤った結果,IP不況を呈したことは有名だ。

こう考えていると,最近なにかと話題の3世代携帯電話FOMAは,思ったよりも早い段階でISDNと同じく『過去の負の遺産』化することによって,IP化した4世代目の携帯電話への足かせとなり得る。米国での例を参考にした場合,日本でも通信業界を発端とした第二のIT不況も容易に想像可能というわけだ。

特に現在,優良企業と言われ,もてはやされているDoCoMoや,先行きの収益構造が不透明なNTT地域会社が,IP電話による産業構造の変革を甘く見積もり,結果として需要予測をハズしている可能性を考えると,通信の今後10年は寒いものになってしまう可能性も否定しない。
高速なデータ通信を売り物にしながらデータ通信は決してペイ出来ず,結局高止まりしている音声通話による収益構造を内包/維持しているFOMA網を,これから全国に構築しようとしていることや,或いは既に完全に結論が出ているISDNを,未だにインセンティブを付けて廃退的な売り方をしていることなどが証拠である。

電話会社に来るべきIP時代の小さな電話市場を予測し,大リストラ敢行と大規模にデータ通信へシフトすることが求められているのは,ハッキリしてきたと言えるのではないだろうか。

携帯電話で他社へ乗換えを促進
2001年12月11日(火)


▼Yomiuri On-Line『携帯電話、2003年から会社変えても番号同じへ』
http://www.yomiuri.co.jp/00/20011211i501.htm


DoCoMoがPDC端末からFOMAへ同番移行サービスのようなものが来年第2四半期に始まる。
これが携帯電話全般に適用されることになる。

加入者電話では,地域電話会社を変更しても電話番号は変わらないわけで,もともと本来は電話番号とは通信事業者が所有するようなものではない。携帯電話では,システムの便宜上ということで暫定的に事業者に番号空間が割り当てられていたが,システムの高度化・熟成化で同番移行が可能になってきた模様だ。

『番号が変わるから他社へ移行するのを躊躇している』という声は,Webmasterの周りでは多く聞こえる。特に音が比較的良い2.5世代目(cdmaOne)〜3世代目(FOMA等)の携帯電話へ乗り換えるメリットは大きい。新しい音声コーデックは,以前のPDC端末のひどい音を改善しているからだ。

もっともCDMA技術の特徴とは,GPSなどを利用し基地局同士を同期させることによって,端末が複数の基地局と同時に通信する際に基地局間を文字通りシームレスに安定通信を提供できることであった。

しかしDoCoMoの3世代目は,あろうことか基地局設置コストを最優先した結果,GPSによる基地局間同期をなんと省略してしまったためか,当然と言うべきか,なかなか安定しないようである。

DoCoMo関係の技術者によれば『基地局同士の同期は不要で,省略しても問題無い』という弁だったのだが,蓋を開けると案の定で随分と苦労しているようである。
DoCoMoと関係各社は,スペクトラム拡散通信の非同期に端末に届く電波の処理で,なかなかS/N比が改善されず,未だに有効な解決方法が見出せずに大いに悩んでいるという。結果的に同期ズレ対策費がGPS対策費を上回るような本末転倒な事にならなければ良いが・・・。

なにより通話品質が下がってしまっては意味が無い。ユーザー本位でないサービスは受け入れがたいのである。

確かにGPSという米軍需の技術に,通信インフラの根本原理が依存していることは喜ばしいことではないが,こうした状況を改善するために,最近では米国内でもGPS民需開放への動きがさらに活発になってきている。

このような技術的背景を意識しているのかどうかは判らないが,Au陣営の3世代目のセールスコピーが『GPSケイタイ』などとしているのは,実に感慨深い。

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