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先月の『またか?今度はBlu-ray Disc vs DVDか(リンク参照)』で『独禁法の死角』とした件で,『特許による独占は独禁法に抵触しない』というご指摘を頂いた。
独禁法が特許関連法を避けて運用しなければ,特許が無意味になってしまう。特許によって与えられた独占権が独禁法に抵触してしまうことになれば,特許のシステムそのものが成り立たないためである。現行の独禁法が特許を扱わないのは以上のような理由で妥当であり,まさにこの点を指摘された。
指摘された内容はごく当たり前だ。現行法を現行のまま運用した場合は,ご指摘の通りと思われる。
しかし,いくら特許と言えども,この権利の濫用する企業を是とする社会的な風潮への批判として,同時に現行法の枠を超えた社会のあり方を考えた結果,特許がもたらした科学技術向上という役割が変質しつつあると実感したので,Webmasterなりに主張してみたのであった。
さてここでは,企業(ここでは特に大企業)によって特許権(工業所有権)がどのように使われているかの実態と,これからのあるべき人類の知的財産のあり方を考えてみることにしよう。
海外(主に米国を指している)では,ある企業が新たなビジネスを始める際に関連ビジネスモデル特許や技術に関する特許など,新たな特許を(既存の特許に抵触しないようにどうにかして)申請してから事業化することが多い。そしてその後,似たようなビジネスが立ちあがり競合して脅威になり得る場合には,市場での競争を避けるためにとりあえず法廷に競争の場を移して叩くことを行う。既得権益を守ることが保証され,これが新たなビジネスを広げる原動力になる。米国ではごく基本的な企業倫理になっている。
しかし,『大企業 vs 新興企業(あるいは個人)』の場合,必ずしも特許の理念通りにはなっていないようである。
その圧倒的な体力の違いからまともに法廷闘争を行うことが出来ず,このようなケースでは2パターンが考えられるが,いずれも不本意に買収や和解に応じざるを得ないケースが多い。
2パターンの1つは,新興企業が特許を取得していて,大企業が似たようなモデル/技術を用いてビジネスを展開しようとした場合だ。新興企業の側は,大企業の有能な弁護士団・弁理士団の支配する法廷を戦うだけの充分な人材/資金/期間を確保することは困難だ。殆どは,大企業の側からの不本意な提案を呑み,結果的には買収/和解せざるを得なくなってしまう。
もっとも米国の場合,特許そのものの有効性を見極めることが可能で裁判での判例などの経験のあるアナリストや投資家が豊富なため,本当に不本意ならばそういった投資家に頼って闘争を続けることは可能ではある。日本のように担保本位の銀行が企業の資金確保の大半を担っているというパターンからすると,技術や事業の内容を吟味したり将来性を評価することが,米国に比べ極端に弱い部分であるため(ここが護送船団方式の弊害で最も大きな部分である),今後,訴訟社会になった場合には,ますますベンチャーが育たなくなり,現場は窮屈なものになることは予想できる。
もうひとつのパターンとしては,大企業が先に特許を申請していて,その特許の内容に不服な場合がある。殆ど独創性の無い内容が特許として認められてしまっているようなケースだ。特許の有効性を問うために,法廷に持ち込まなければならず,新興企業のような体力の無い側が積極的に裁判を起こすことができないということになってしまう。
これらのパターンによる社会全体の機会損失は相当なものになっていると考えられ,本来の特許法の目指す『独創的で社会的に有用な発明に関して保護し,かかる発明を促し結果として社会全体の発展を図る』という理念とは180度違う運用が実態になっていることがあるのだ。人類全体で考えた場合,現在の特許法とその運用は妥当と言えるのだろうか。
そもそも知的所有権の問題そのものの根幹である特許などの考え方は,いつ頃発展し定着していったのか見てみる。この辺については,当サイトで解説することは割愛し,特許庁などによる適当なリンクを紹介するに留めておこう。
▼北海道経済産業局『特許の歴史を旅しよう』
http://www.hkd.meti.go.jp/hokig/student/j07/
▼同『もう少し特許について勉強してみよう』
http://www.hkd.meti.go.jp/hokig/student/j08/
▼経済産業省 特許庁『工業所有権制度の歴史』
http://www.jpo.go.jp/shoukai/rekisi.htm
つまり,主に個人の発明や発見に対して保護を主な目的としてきた経緯がある。これは新興産業の保護と推進などによって,長い目で見て日本の(或いは人類全体の)文明としての発展を促進するシステムだったのである。人類は特許システムそのものを発明したと言っても良い。また,過渡期として企業間研究競争を促した面もある。
しかし,長い歴史の中で着々と定着しつつある特許関連法だが,ドッグイヤーと言われるハイテク業界やソフトウェアサービス業界での特許の有効期限が最大20年になっていることの妥当性や,(暗黙のうちに訴訟をチラつかせたりするような)権利を濫用することに対する歯止めは,未だに未整備となっていると言わざるを得ないだろう。
最近になって出願件数が指数関数的に増え,内容も多様化していく中で『厳しく審査した』結果が必ず正しいとは限らず,最終的には法廷などの手続きが必要になってくるなど,むしろ公正な競争を阻害していたり,現実的に大企業がより有利になる図式が成り立っているのである。つまり特許法の運用の面まで考えないと,さまざまな問題が出てくると言える。
特許の理念が正しくとも運用が間違っていると,くだらない技術・ビジネスモデルなどを『先に出願した者勝ち』となってしまうことにもつながる。くだらなくとも(運用が間違っているために)特許として認められれば,特許を維持するための費用がかかり,申請にかかる費用もある。これらも大企業に圧倒的に有利になっている。つまりこれが『くだらなくとも取り敢えず大量に出願,あわよくば特許として認められ,すぐに使わない特許でもとりあえず長期間保持して,法廷用の材料に・・・』という大企業のやり方である。
こうなっている現状では,新興企業の活動が非常に窮屈なものになるばかりか,既に消費者のための仕組みでも無い。いまや大企業のための特許とも言え,最終的には特許の理念を踏みにじる結果となる。
運用方法などの線引きは難しいものがあるかもしれないが,見過ごすわけにはいかない。より細かな基準などを明文化するなどして規定を設け,人類全体の為により厳しい方向で運用をする必要があるのではないか。既得権利を温存し過ぎている現状を打開する必要があるのではないか。
つまり日本の製造業やそのたの産業を復活させていくためには,どのような措置があるのかを考えると,某公共放送のプロジェクトXで『技術立国回帰』というメッセージも大変結構だが,それを具現化するためには,もっと根本的な問題があると思われるのだ。
そもそも何の為の特許法だったかをもう一度考える必要があるのだ。Webmasterは,日本ではDVDやBlu-ray Discの一件が,最も身近な問題として露呈していると感じているので取り上げたのであった。そこにはユーザ不在の企業側の論理ばかりで,しかもメジャーな規格として必要な『妥当かつ無差別にライセンスする原則(=RAND)』が守れてなかったのではないか。これを公取委のような機関で監視できないというシステムは欠陥とは言えないか。
もちろん現行法ではこれらは正当な行為ではあるが,そもそも大企業による発明の保護について,必要不要の論議が当然あるだろう。
参考までに以下のような一例がある。この件は一時期大いに心配させた。まだ問題が残っているようだが,結局『特許規格』は採用されない流れになったことで,Webmasterを始め多くの人々がひとまずホッとしていることだろう。
▼ZDNN『W3Cの「特許規格」に抗議の嵐』(2001/10/02)
http://www.zdnet.co.jp/news/0110/02/e_w3c_m.html
▼同『W3C,「特許規格」提案を取り下げ』(2002/02/27)
http://www.zdnet.co.jp/news/0202/27/e_w3c.html
▼MYCOM pcWEB
『W3C、ロイヤリティフリーな仕様の実現に向けて新たなドラフトを公開』
http://pcweb.mycom.co.jp/news/2002/02/27/17.html
ここから学習すべきことと言えば,人類共通のツールや約束事に参照される発明に関して,大企業はそれを独占するのではなく,逆に解放していくべきなのではないか。つまり独禁法とむしろ連携して考えるべきものなのである。Webmasterは21世紀の新しい知的所有権のあり方を問うこの議論について,今後もこの動向に大いに注目している。
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技術的に非常に困難だったNTT局からの距離やADSL実効速度の事前調査。
これをWeb上から調査する環境が,ついにというか徐々に整いつつある。
▼NTT東日本『電話回線の線路情報検索』
http://www.ntt-east.co.jp/line-info/
NTT東西のものは,各ADSL事業者と連携して『ADSL販売促進のため』という意味合いが強いようである。この検索システムの構築/運用にかかる月額費用(なんと1100万円)は,NTT東西のフレッツADSL分も含む各事業者別に新規契約者数比率を算出して按分するようである。
しかし,NTT東西のものは一般向けには距離くらいしか参考にならないと思われる。損失をdB表記で提供されてもイマイチ実感がわかない。この損失レベルと実際の回線速度との因果関係を示すメジャーな資料が見当たらないからである。(Webmasterが発見したらこの場で報告しよう。)
ちなみにこの距離情報,かなり長めに出る傾向がある。NTT局舎の近所に住んでいる某会社同僚は,局舎間の道のり距離で150m程度なのに対し,検索結果で表示された線路長は700mであった。
ちなみに,WebmasterはType IIのため,電話番号を直接入力しなければならないので検索することが出来なかった。Webmasterが住んでいる建物の1階にある店舗(飲食業)の電話番号で検索してみたところ,線路長1390m・損失32dBと表示された。局舎との直線距離770m・道のり距離が1000m弱なのに対し,少々長めであった。
長めの数値になっているのは,実際の線の長さがこうなっているものと納得するしかないのだろう。工事の都合や配線の都合で,かなり遠回りになっているというのが実態のようだ。
(某会社同僚とWebmasterはいずれも6Mbpsを超えるリンクを安定して保っていることから,もはや局舎間の線路長はどうでもよいわけだが・・・)
▼Impress Broadband Watch
『Yahoo! BB、町域単位でADSLの推定速度が分かるシステムを公開』
http://www.watch.impress.co.jp/broadband/news/2002/03/12/ybb.htm
Yahoo!BBのものは,もっと具体的にbps表示されるので有用である。実際のスループットとリンクアップ速度では,かなりの開きがあり,表示されているリンクアップはかなり高めの結果が出ているのは要注意だ。
ただし,大字太字で示されたbps表示の下に,コンピュータの能力によってスループット値が提示されるので,むしろこちらを参考にすべきだ。
ただし表示される内容はいささか信憑性が問題かもしれない。というのもBBTech社はAnnexAの統計的な結果を反映していると言う。フレッツADSL8Mbpsなどに用いられているAnnexC G.dmtでは,これよりも速度を期待してしまうかもしれない。
しかし,おそらく実際には統計データを元にISDN干渉の影響を排除した場合の数値になっていると思われ,結果的にAnnexCに見劣りしないような数値が表示されるとWebmasterは邪推している。しかも保安器やブリッジタップによる影響も排除している可能性もある。つまり理想的な回線コンディションを想定している可能性があるわけで,実際のリンクアップ速度はこれよりも大きく低下するケースが多いのではないだろうか。(その場合には,いずれも有料ではあるが,収容回線替え・保安器交換・ブリッジタップ外しなどを実施することによって回避できるが・・・。)
いずれのパターンで検索しても,結果を鵜呑みにするのではなく参考程度に捉え実際にxDSL回線を開通させてみるまでわからないという点では,いままでと変わっているところがないのが悲しい。しかし,これらの他にもっと有用な調査方法がない現時点においては,引越の際には役に立つだろう。
▼参考資料 eAccess社
『【参考】8MサービスにおけるADSL回線の線路長とリンクアップ速度について』
http://www.eaccess.net/jp/service/notes_refer.html
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また(1)電話番号が既に判明している・(2)既存の公衆回線を使っている・(3)現地に使用可能なアナログ一般電話回線用アナログモデムが使える環境にある場合には,以下を試すことも出来る。
現時点でアナログモデムによるテストが行える環境というのはいまどき特殊なケースと言えなくもないし,しかも多くの手間がかかる割には正確な結果を期待できないが,ひょっとしたら試してみる価値はあるかもしれない。
▼ZDNN『速報:ADSL開通前に速度を推定 NTT東が実験開始』
http://www.zdnet.co.jp/news/bursts/0202/08/03.html
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