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inet電話の加入網からの着信 10月開始へ
2002年05月15日(水)


▼日経コミュニケーション『IP電話の電話番号は「050」 総務省,電気通信番号規則の改正案を公開』
http://www4.nikkeibp.co.jp/NCC/news_top10/f_ncc2914.html
▼CNET『IP電話に番号「050」を割り当て』
http://cnet.sphere.ne.jp/News/Infostand/Item/2002-0513-J-6.html
▼インプレスBroadband Watch『総務省、IP電話に「050」の電話番号を付与へ』
http://www.watch.impress.co.jp/broadband/news/2002/05/13/somu050.htm


Webmasterは,IP電話,とりわインターネット電話(以下inet電話)について注目しており,IP電話そのもののさまざまな方式などについての検討を行ってきた。特に,Webmasterが心待ちにしていた加入電話網からの着信は昨年12月スタートが見込まれていたが,総務省が本格的に検討(諮問機関からの答申待ち)によって3月頃→6月頃と,たびたび延期され,現時点で10月頃開始ということだ。

正式に*月開始ということをアナウンスされたわけではないが,期待して待っているユーザとしては,既に度重なる延期にはうんざりする。もっともこれは,安易にinet電話に対して番号割り当てを行わず,電話としての基本サービス品質の維持に重点を置いた通話品質の評価方法の検討がなされた結果によるもののようである。

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そもそもinet電話とは何だろうか?
IP電話とinet電話は何か違いがあるのだろうか?この点を明確にしておくと,今後のinet電話導入に際して,諸々のニュースをより正確に読み取ることが出来るようになるだろう。

その前にはまず,IP電話(VoIP = Voice over IP)と一般の電話の違いを大まかに説明しておこう。一般電話はNTT局舎内に鎮座している『回線交換機』という非常に高価な機器を使用して,通話回線を確保してから音声通信を行う方式で,交換機を使用して回線を確保することから『回線交換方式』とも呼ばれる。

一方IP電話は,インターネット等で使われている通信パケットの技術を用い,音声のデータをパケット化(宛先のついた小包をイメージするとわかりやすい)し,続々と送信する。これを(回線交換機に比べると圧倒的に安価な)ルータなどでひたすら仕分け,目的の配送先に辿り着くように通信回線(=経路)を選択しつつパケットを転送する。このことを繰り返すことによって回線を維持する方式である。

一般の電話が比較的高価な理由は,交換機器の投資費用だけでなく,回線そのものの有効活用という面でも現れる。つまり,回線交換方式では,通話をするために回線を確保しなければならず,一定の通信帯域が確実に消費される。このため,基幹の回線は,ピーク時の通話回線数を想定して,充分な帯域(=回線数)を確保しておかなければ通話が全く不可能なユーザが頻発することになってしまう(呼損・輻輳=ふくそう)。回線が確保できなかった場合の現象として,電話をかけようと思っても受話器を上げたとたんに『話中』と同じツー・ツーが聞こえてきたり,掛け先がこの状態だと,そのかけた相手自体は通話をしていなくとも話中=呼損になっていまう。

電気通信事業法等によって,このようなことが頻発しないようにするために,呼損率を0.15を上回らないようにするなどして,接続品質の維持を求めている。このような輻輳対策として充分に確保された回線は,普段は使われることが殆どないために,回線の投資効率が悪く,結果として回線交換方式は高価な方式となっている。

昨今,パケット通信がもてはやされている理由は,違った目的の複数のパケットを同一の回線に流し込めるということと,回線が混んで来ても即『輻輳状態』にならないことだ。特にインターネットの場合,後者のメリットは大きい。多少待てば,通信先にパケットが配送されればよいと考えれば,瞬間的には通信が滞ったとしても問題は大きくないからだ。もちろん本来期待されている品質とかけ離れて殆ど通信できないような状態では,もちろん輻輳という扱いになるわけだが,回線交換方式と安全マージンを比較すると大幅に少なくすることが可能だ。

もちろん従来は,200ms程度の遅延がクリティカルな状態を招くような通信をインターネットパケット網で行うことが,むしろナンセンスであったため,インターネット網のための回線と従来の回線交換方式のための回線の使用効率を比べることは出来ない。

しかし最近のインターネット網を取り巻く状況が変わりつつある。FileダウンロードやVoD(ビデオオンデマンド)など,巨大帯域を消費するコンテンツに対する欲求がインターネット網の飛躍的な大容量化を推し進めた結果,音声通信のような十数Kbps程度の帯域が,コスト的・技術的に問題とならなくなってきたということがあり,安価に通話が行える電話の代替手段として,VoIPが出現したということだ。つまりパケット通信のメリットの『同一回線で複数のパケットを扱うことが出来る点』が,VoIPが最近になって大きく加速した理由でもあると言える。

技術的に問題にならないと書いたが,音声通話に関してはパケット通信の特性上,克服すべき問題が残されているのも事実である。パケットロスも問題の1つだが,それよりも主に遅延時間(=レイテンシ)と,その時間のバラツキの方が主たる問題となっている。

また,サービス品質を客観的に評価する方法も,まったくの開発段階と言ってよい状況だった。近年,このVoIPにおける品質評価の分野は急速に研究が進んだようである。

▼shirou, pierre『Voice Over IP Performance Monitoring』(ITU-T Rec. G.107等に関する論文)
http://www.acm.org/sigcomm/ccr/archive/2001/apr01/ccr-200104-cole.pdf

Tomohiro Ishihara 氏によるとおもわれる和訳→http://www.sfc.wide.ad.jp/maui2001/RINKO/data/ccr-200104-cole-resume.txt
※いずれも無断引用

総務省では,IP電話の品質として,最低でも『ITU-T Rec. G.107』のR値が50を超えないと電話番号を割り当てない方針としている。

▼総務省 報道資料『IP電話サービスの本格的な普及に向けて』
http://www.soumu.go.jp/s-news/2002/020513_1.html



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さて,ここまではIP電話全般の話である。IP電話は,VoIP技術を用いた電話であると考えても良いことがわかっただろうか。

そして『インターネット電話』とは,IP電話の中でも特に『インターネットに利用されている回線に音声データを乗せて通話をしてしまう方式』のことを指している。結局IP電話の一種ということになるが,途中の経路にインターネットと共有している回線があるならば『インターネット電話(inet電話)』として区別しても良いということだ。

一部の専門家や報道関係者でも,IP電話とインターネット電話の区別があやふやだったりするため,注意が必要である(かく言うWebmasterも区別できるようになってから,それ程経っていない)。

注目すべきinet電話は,基幹側の経路の一部がインターネットと共有しているものではなく,ユーザの経路にADSL/CATV/FTTH/無線などの接続によって常時アクセスできる回線を利用するものだろう。また,狭義の『インターネット電話』では,このような種類のもののみを指す場合がある。

Webmasterが特にこのようなinet電話に注目している理由は3つある。1つは,NTT加入電話網の電話回線を使いたくないことが挙げられる。施設設置負担金(=電話加入権)は,既に時代遅れで,現状に照らして適切ではないと考えられる。既に原価償却している設備に,理不尽にも未だに費用を請求してきても,正規の価格ですんなりと負担する気になかなかなれなかった。携帯電話などにはこのようなユーザ負担費用が無いばかりでなく,逆に電話端末機の購入費用までも販売店にインセンティブをつけてまで(もちろん現状のサービスが必ずしも健全と言えないが)売っているという現状を知っていると,そのコントラストは感慨無量である。

ADSLで加入電話と重畳しないType2を利用すれば,電話線を利用していても(加入宅から局までの月額基本料相当額の費用は発生するものの)交換機とその回線交換バックボーンを使用しないという理屈で施設設置負担金の負担は免れることが出来る。

安価な加入権再販サービスを利用するのもひとつの選択肢だろうが,どのような形であれ施設維持負担金には関わりたくなかった。携帯電話などがあれば済んでいたし,消極的な態度ながら,負担しなくて済むのであれば出来るだけ避けたかったということだ。

2つ目は,非常に安価な通話コストに期待している。圧倒的な帯域が確保されたインターネット時代では,音声のための帯域を確保するコストは限りなく0に近づくと思われ,古典的な固定電話の価値が急速に薄れつつあるからだ。つまり『通話料金』という言葉自体が,過去のものになってしまう可能性も否定しない。もちろん従量制としての通話料金の話であって,定額制としては何らかの形で残ったとしても問題はないだろう。しかしサービス各社は月額基本料金が無料なサービスも視野にあるようで,前述したVoIPの技術的な問題が解決されれば,固定電話そのものに価値など無くなってしまう。これは近い将来の話である。

理由の3つ目として,インターネット機能との融合という点だろうか。実はこの点が最も大きい。Webページと共にインターネットの重要な要素として,e-mailやIMサービス(インスタントメッセージングサービス)などがあるが,これらはWebmasterにとって非常に大切なコミュニケーション手段のひとつとなっている。これらと既存のFAX・通話機能とが融合することは現実的な話として実感出来るし,同時に大きな期待を寄せている。既に次世代の携帯電話では,この方向性がハッキリと示されているため,固定電話でも当然の流れになると思われる。

カメラ搭載などでTV電話・静止画写真メールという機能が話題になっているのだが,これはおもちゃのような使い方はあるだろうが,コミュニケーションの手軽さという点から言えばこれは本命(=キラー)ではなく,むしろIMサービス辺りが重要になるだろう。これらの機能を統合したIP電話機(IP電話専用機)が世に出てくることに大いに期待しているのは既に述べた

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inet電話と言えば,パソコンにソフトを導入してIP電話機化してしまう手軽なパスも考えられるが,電話番号の割り当てによって着信をいつでも可能になることを考えると,消費電力や騒音などの使い勝手の面からIP電話専用機が欲しいところだろう。しかし当面は高価なものになると予想されるため,専用機はすぐには普及しないだろう。そこで,以下のような製品で繋ぎとして活躍してもらうことになるかもしれない。

▼コンパル:inet電話用受話器『i-Talk2U』
http://www.compal.to/products/products/i-talk2u/


マイクとヘッドフォン,あるいはヘッドセットを用いるのが,現状でのinet電話の標準的なスタイルと予測される。しかし個人的には,このような機器で従来と変わらないスタイル/感触で通話したいという保守的な願望が存在することも否定できないため,ナニゲに注目しているのである。出来ればコードレスフォンなどが出てくれば尚OKなのだが・・・。

また,コンパル社のこのサイトには,現時点での代表的なinet電話サービス一覧が載っているので,参考になると思われる。

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