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PSXは本当に家電と言えるのか
2003年08月09日(土)


▼ZDNN『ソニー、「PSX」年内投入 PS2にDVD&HDDレコーダ機能を融合』
http://www.zdnet.co.jp/news/0305/28/njbt_04.html

▼同『「PSXは家電製品」だがBBUnit市場を拡大する』
http://www.zdnet.co.jp/games/gsnews/0307/29/news16.html

▼同 リビング+『「PSX」の姿を想像してみよう』
http://www.zdnet.co.jp/broadband/0308/05/lp20.html

最近の企業による囲い込みが消費者の権利を奪っている
という気がしてならないのはWebmasterだけなのだろうか。この観点から企業の戦略や競争を見ていると,ユーザ本位のサービス/製品なのか,あるいは単なる企業サイドの都合のモノなのかがハッキリするのである。

さてここでは,敢えて家電の定義を厳密することを行わないが,しかし,一企業やグループがその主要な部品や方式,ソフト,流通などを独占し,かつ非排他的な戦略を堂々とやっていたとしたら,それは家電なのだろうか。

特にソフトからハードまでの,それぞれ知的所有権・生産・流通を同一の企業グループで強力に囲い込んでいるもののコトである。他に類を見ない閉鎖的な流通,非常に不透明な価格設定と再販限定制度。少なくとも非排他的になっていなければダメだと思うのはWebmasterだけなのだろうか。

そこで改めてPSXを見てみると,得られる印象はどうか。
問題はソニーグループの経営方針説明会で発表され,SCEIではなくソニー本体の製品としてリリースされるということだ。つまり,映画産業・ゲームソフトと,それに対応したPSX製品,それぞれの知的所有権・生産・流通をすべて強力に囲い込んでいるわけで,しかもゲームに関しては非常に排他的な商習慣がある。しかも是正される気配が全く無い。

特許や著作権がベースになっていても,製品生産と流通まで制約する場合には,独占禁止法の対象にならなければおかしいと思われたが,これを是とした路線が経営方針として大々的に報じられ,しかも,これでソニーショックから立ち直ろうとすることに関して肯定的な論調が多いことも,同時に驚かされたものだ。なんと目先が短いのか。

確かに規模の問題と考えることが出来る。シェアが少ない場合には,このような囲い込みの商習慣が存在しても,消費者にとってはそれほど不都合が無いが,それが超有名優良の大企業の,しかもグループ総力で,旗を振っていることに問題があり,かつそれを多くの人々が問題にしていないことが最大の論点とならないか。

なぜソニーのような活動をする企業の経営が,数々の賞を受賞するに至るのか,それ自体に問題があるのではないか。なぜユーザサイドに立った経営が賞賛されないのか。

この傾向は,業界ウォッチャーやアナリストといった視点のみで,情勢などを判断している現状では無理も無いわけだが,我々が企業ための単なる消費者として存在しているのではないことを銘じて貰いたい。少なくとも企業の経営責任者や記者には,このことを自覚する責任があると思われる。

また逆に,それが企業なのだ,と指摘することも確かに可能なわけで,こういった構造的な問題には,独禁法強化などが結局,それなりの規制が必要になるのである。それには一定の世論が必要なわけで,これがWebmasterの考えるユーザの責任と言える。


ソニーほどの大企業が,必死な囲い込み戦略をゲーム以外にも広げ,つまり『融合』の名の下に,遂には堂々とAV・家電へ囲い込みの論理を進出させるきっかけになってしまうわけで,企業活動というものが,突き詰めていくと企業vs個人(消費者)という構図が成り立ってしまう。

ある分野の製品を使おう/サービスを受けようなどと思えば,それを囲い込んでいる特定の企業グループの強制する方法・方式に従ってのみ許されるという現実。存在すら認められないケースも多々あることは容易に想像がつく。しかも,一旦少数派になってしまえば,次世代に至るまで我慢するしかなく,大きく改善するブレークスルーが登場するまでの間は,(1)資本の集中がより加速し,(2)しかもそれによる買収などによる囲い込みも容易になり,(3)ますます少数派が不利となる,というダメスパイラルの構造。これは某OSの会社を彷彿とさせる。規模が規模だけに,その企業活動自体が障壁に成り得るという資本主義の些細な欠点が,実に大きな本末転倒な事態を招くことになるのだ。

圧倒的シェアに到達するプロセスにおいて,従来の企業サイドの論理による囲い込み方針を捨てなかった某社(あるいは現在においてもなお鋭意継続中だ)は,もはや企業理念でもなんでもなく,単なる個人に敵対する存在に堕ちたと一蹴されても仕方が無いとWebmasterは考えている。同時に,このような囲い込み商法には,それなりの規制が正しく必要で,またそれが当然だ。

しかし某OS会社の場合は,まだマシな方である。少なくとも現在は,流通とソフト/ハードの生産の現場がオープンだからである。1個人でソフト/ハードを勝手に生産し,それを自由に配布/販売することが可能になっているからだが,これがゲーム機となるとこうは行かない。ただでさえ一般に公開されている開発機材/API仕様なぞ無いし,コピープロテクトにガチガチに守られたハードと,商標や知的所有権を盾にした高額なライセンシーと引き換えに生産量までもコントロールされた流通の下に,すべてが収まるようになっている。これを家電とするならば,絶対に是正されるべきであろう。

もちろん日本の当局だけで独禁法を強化してしまったら,海外の囲い込み産業が日本にやってきてしまうという矛盾を招くわけで,米国をはじめとする先進国で独禁法の強調連携が必要なのであるが,国家戦略に関わる重要な部分という理由で,各国の連携の動きは鈍い。地域単位では過度の独占をフォローする動きにはなってきたのだが,その根拠が地域内の産業を保護するということを第一義としている感が強く,そういう理念からして十分と言えるはずも無い。

今回の発表と報道は,某OS会社の教訓があるにも関わらずそれが生かされないまま,ユーザサイドの視点で見た『良い製品/サービス』とはどのようなものなのかを悪い意味で象徴する出来事と言え,しかも是正される兆候が見られないのはもちろん,こうした囲い込みを是とした経営手法が賞賛されるという傾向がさらに加速してさえいると思われるのは,実に残念なのである。

もちろんSCEIで無くソニー本体が行うことで,非常に閉鎖的な寡占・独占の囲い込み戦略が大幅に是正される方向に向かうのであれば,以上に述べたことは,意味を持たないと言える。むしろ本当の意味での家電となり,つまりPSXというものが単なる『方式』や『規格』にとどまって非排他的なデバイスになり,ドギツイ囲い込みから開放されるのであれば,Webmasterはもろ手を上げて歓迎したいのだが。

※写真はソニーのIR情報を公開するPDFから引用しました。

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