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日本のNGO ♯7
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「食糧増産援助を問うネットワーク」調査通訳記 その3
2003.8.30 |
<「その2」へ
「食糧増産援助を問うネットワーク(2KRネット)」の調査旅行の最終日。この日の前日には、午前中、ケソン市にあるPRRM(Philippine
Rural Reconstructive Movement)というNGOで「持続可能な農業」に関するコンセプトを聞かせていただくのに同行させていただき、午後はIさんおひとりで、日本大使館の農業担当官の方とミーティングをなさったという。
PRRMとは、フィリピン農村開発NGOの草分け的なNGOである。設立当初から政府の支援を受けていたが、マルコス政権の戒厳令下では違法化され、リーダーたちは地下に潜った。アキノ政権以降、そうしたリーダーたちによって再建され、幹部スタッフを大臣など政権の重要なポストに出すなど、(良くも悪くも)政権との関わりが強い。4階建てのオフィスビルを持ち、一時はスタッフを200人かかえていたという規模の大きさでも有名である。
本日は、PRRMのバタ○ン州(別に伏字にしなくとも、あっという間にわかってしまうのだが…)のプログラムを見せていただくことになり、Iさん、そしてタガログ語通訳のTさんとともに、朝早くからフェリー港へ。バスのほうが安いのだが、フェリーだとマニラから約1時間で到着してしまう。
迎えてくれたのは現地の漁業セクターの住民連合の代表であり、セクターを超えた住民組織連合の代表でもあり、さらには住民組織リーダーとして初めてPRRMの理事会メンバーに就任したN。以前にも何度かバタアンに来たときにプロジェクトを案内していただいたり、お家に泊めていただいたりしたことがある。漁師だが、最近はそちらの業務に忙しく漁には出ていないと言う。
彼は実はバランガイ・キャプテンも務めたことがある。バランガイ・キャプテンとは日本でいう自治会長のようなもので、全国一斉選挙で選ばれる。4年前に彼がバランガイの役員をしているときに前任のキャプテンが任期半ばで急死し、代わって就任したのであって、その次の選挙(2002年)では落選した。「立候補するための条件って何?」ときくと、「フィリピン国民であること、その土地に半年以上住民登録をしていること…それから、お金。」という。「一人に○○ペソ配った」などとも言っていた。「違法でしょ」というと、「うん、違法。ははは」とのこと。そんな大声で言っちゃっていいのかしら…。
PRRMはとにかくいろいろと有名なので、日本からもその他の国からもたくさんのドナーやNGO、個人が視察に訪れる。また、PRRMのプロジェクトは、しばしば、日本の大学生・大学院生の研究対象ともされているようである。フィリピンには(フィリピンに限ったことではないかもしれないが)こうした、よくも悪くも訪問者を『受け入れ慣れ』たNGOや地域、住民組織が存在する。前日にケソンシティでインタビューをしたときにも、「ああ、この担当スタッフはもう何十回も、いや何百回も、こうした訪問者の質問に答えているのかもしれないな」と思った。Nだって、それからNが紹介してくれた農家の人だってそうかもしれない。よい悪いの問題ではなく、その点を意識しておかなくてはならないなあ、と思う。
先日、日本から、フィリピン研究者の先生のお一人がマニラに来られてお話いただいた。「
コミュニティの政治的組織(その多くは左翼系の組織)同士の確執や共存の様態を知りたい」という私に対し、先生は「NGOのスタッフだって、訪問者との人間関係によって、どこまで話してよいかを絶妙に判断するんですよ。僕なんて、ひとつのある政治的組織の連中に関わって13年。それでやっと、時機を見ながら少しずつ話してもらったことがたくさんあるんです。組織に政治的な組織なんて、彼らはプロですよ。たった数ヶ月の滞在で、何年も続いてきたコミュニティの中の住民組織や人々の思想的背景を知ることはできません」と言われた。まさに、おっしゃる通りなのである。
最終のフェリー(17時半)でマニラに戻らなくてはならないので、駆け足でいくつかの「持続可能な農業」を実践しておられる農家を訪問し、お話を聞かせていただいたのみに終わってしまった。「日本でNGOをしている人だ」と紹介され、「うちのバランガイにどこか日本の団体が寄付をしてくれないかなあ」と言われ…。
このような訪問は、私が学んでいるフィリピン大学の「社会福祉地域開発学部」のカリト先生などは、もっとも嫌っておられる「コミュニティへの入りかた」である。
「たった1日コミュニティに来てさっさと帰るなどというのは最悪」「はじめから問題を設定したような質問のしかたをしてはいけない、何が問題は」「現地の人の使う交通機関で移動し、できればじっくりと歩いてコミュニティを見なさい」「アンケートのように突発的に質問をぶつけるのではなく、人々と過ごす中で、何日もかけて知っていくものなのだ」「援助機関からきたような顔をして、あたかも何かできるかのような約束をしてはいけない」…
あれだけ授業で劇やロールプレイをしたのだから、そうしたことは重々わかっている。私だって、駆け足でその土地を訪れ、要所だけ案内してもらって「現場を見た」ような気分になり、満足して帰ってしまう…そんな、援助機関や「NGOの視察旅行」のようなことは、できればしたくない。いや、今回は本当に「NGOの視察旅行」なのだけれど…。
…といったことを感じた複雑な駆け足訪問だった。今まで、短期で来るときにはそんなことは考えたこともなかったけれど、実際に自分でコミュニティに入らせてもらって、そして、カリト先生の指導を受けて、今までの自分の「調査(と自分で思っていたもの)」の甘さを感じている。 |
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