日和見バナナ
We are students of development.
Hiyorimi Banana by "saging"


INDEX

Profile

Pilipinismo

Fence-sitting

Keso de Bola

About

Links

管理人の
メールアドレスはこちら
ご覧ください

TOP

TOP >> Pilipinismo 目次 >>

Pilipinismo


フィリピンの文化 ♯10
バクラとは何か
2003.7.22(火)
タガログ語には「バクラ」という言葉がある。たいていのフィリピン人は「バクラ=ゲイ」と説明し、日本人の日常会話の中では「おかま」と表現されることが多い。
しかし、フィリピン大学第三世界研究センターのとあるスタッフによると、バクラは厳密にはTG(トランスジェンダー)だという。TGは性同一性障害の一種で、身体の性(sex)と本人が自己認知する性(gender)が一致しないケース。TV(トランスヴェスタイト、反対の性の服装を身に着ける人たち)とTS(トランスセクシュアル、異性の一員として暮らし、受け入れられたい、ホルモン療法や外科的治療で自分の身体を自分の好む性と一致させたいとする願望をともなっている)の中間概念らしい。
性同一性障害とホモセクシュアル(同性愛者)は別である。「ゲイ」は、「ホモセクシュアル」の略語「ホモ」が差別的であるとの理由で言い換えられたものといわれている(もともとの意味はそうではないらしいけれど)。ニューハーフとは、女装した男性または性転換した元男性を指し、特に接客業(ホステス)、性風俗産業、ショービジネス等に従事している人々に用いられる。
私の通っていた中学校では、生物の時間に1学期間をかけて、同性愛や性同一性障害、エイズに関する授業がおこなわれていた。そのためか、私はそれらに対する偏見は薄いほうであると思う。むしろ、同性愛者を明らかに嫌悪する人たちの態度のほうが私には違和と感じられる。

フィリピンでは、少なくともマニラでは、女装や同性愛が日本よりもずっと社会に受け入れられているように思う。日常的に女装をしている男性(生物学上の)は大学にもいるし、フィリピン大学にはゲイのコミュニティがあるという。私のお世話になっている貧困地区のコミュニティにも、女性よりずっときれいにメイクアップをした男性(生物学上の)が何人もいる。P地区のある住民リーダーのおばさんの家に泊めていただいたときには「うちには成人した息子と娘が2人ずつ、19歳のバクラが1人いるの。バクラの子と同じ部屋で寝てもらうことになるけどいい?」と訊かれた。「彼/彼女(タガログ語では三人称の彼と彼女の区別がないのでこういうときは楽)の心は女性なのですか?」と訊くと、「女性よ。だから、娘たちも彼/彼女を女として接しているの」とのこと。実際、彼/彼女はいつも化粧をしていて、部屋には、女性用の水着やドレスを着た写真がたくさんある(それなりに綺麗である)。しかし、友達も近所の人も、私が見たかぎりでは、彼/彼女をジョークにすることはあっても日常生活で差別はしていない。彼/彼女は男友達とバスケットボールをしたり、女友達と買い物に行ったりする。
日本では、「ゲイ」とか「おかま」とか「ホモセクシュアル」に対する差別意識がすでに定着してしまっているのかもしれない。仲のいい男性二人組を「彼らはホモみたい」とからかうのはよくきかれることだ。でも、そのあとでその本人が「実は…本当にホモセクシャルなんだ」とカミングアウトしたら、笑い事じゃなくなるだろう。なぜ笑い事じゃなくなるかといえば、根底に差別意識があるからだと思う。フィリピンであれば、「あら、やっぱりそうなの!」で済むように思うし、そもそも「実は…」と恐る恐るカミングアウトせねばならないシチュエーションがあるのかどうかもわからない。

性に関する用語概念については、
http://www.netlaputa.ne.jp/~eonw/term/term.html
http://idm.s9.xrea.com/gid/gid2.html
などをご参考に。


        
 

Pilipinismo 目次 >>

>「日和見バナナ」トップへ
[an error occurred while processing this directive]