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フィリピンの文化 ♯15
バレンタイン・デー
2004.2.15(日)
フィリピンでは、バレンタインデーには男性が女性に花を贈るのです。

…それを初めて聞いたときは、「なんて素敵な国!」と思った。日本に住む女性の皆さんも、一度は「バレンタイン・デーに贈り物をもらう側」に立ってみたいと思ったことがあるのではないでしょうか。

2004年選挙のためのキャンペーンが2月9日に解禁になり、お祭り気分に涌くフィリピンで、今年の私のバレンタインデーはちょっとしたドラマだった。2月13日の晩、私は以前から存じ上げていたある下院議員に、インタビューをさせていただくことになっていた。なぜ13日の晩かというと、彼がその日しか空けられなかったからである。「せっかくですから一緒に食事をしながら話をしましょう」と彼はおっしゃった。
その晩私は、彼に指定された、彼の事務所に程近いケソン市内の某レストランに行った。そこは普段はごく普通の静かなレストランらしいのだが、その日に限っては、室内の照明が異様に暗く、テーブルにはキャンドルが点っている。渡されたメニューは「バレンタインディナー」のみ。
彼は選挙区からの議員ではなく比例代表なので、パッと見てすぐに議員であるとわかる人はおそらく少ないだろうけれど、彼は議員であることを示す8ナンバーの車(※)で乗り付けている。「Sir,ちょっとまずくありませんか。日本人と不倫していると思われたら大変ですよ」と私は言ったが、彼はまったく気にせず、「大丈夫、大丈夫。誰も僕たちが政治の話をしているなんて思いませんから、かえって気が楽でしょう。さあ、選挙の話をしましょうか」とおっしゃる。結局、私はそのままムード満点の中でインタビューをさせていただき、その後は大変楽しい会話を楽しませていただいた。その後、私たちはコーヒーショップに移動したが、そこもやはりバレンタイン・ムード一杯で、私たちは店員さんから花束を受け取るなどの特別サービスを受けながら、日付が変わるまで延々と政治の話をしたのであった。

教訓。フィリピンで、バレンタイン前後に外食するときは気をつけましょう。同性同士、友人同士で食事に行く場合は場所をよくよく選びましょう。


翌日はバレンタイン当日。私はケソン市で、某政党の選挙キャンペーン「パレンケ(市場)・ツアー」に参加させていただいた。血と水の跳ねるウェット・マーケット(魚・肉、生鮮食品を扱う)とドライ・マーケット(乾物の市場)をまわって政党のカレンダーやステッカーを貼らせてもらうという、よくあるタイプのキャンペーンである。ケソン市には、有名なQ-MartやMunos(ムニョス)のような大きなものからスラム街の中にあるような小さな市場まで、ウェット・マーケットが多く存在する。
この日は1日中、キャンペーン用のジープで市内を回り、市場のある適当なところで停めては、「いまから手分けしてまわり、30分後に集合」などの約束をして市場に入り、"Happy Valentine"と言いながら、店主や客に政党名をアピールしてまわった。巨大なMunosのマーケットには3時間いたが、Munosに足を踏み入れたのが初めてだった私は、見事に迷ってしまい、約束の3時間がたってもジープにたどり着くことができなかった。あの広さは尋常ではない。

ところで、この地区でキャンペーンを取りしきっている地区代表のJは長身でクールで頭がよく、寡黙なのに語彙が多く表現豊かで、地下活動歴が長くて、見るからに「ただものではない」雰囲気を身にまとった、なんとも素敵な男性である。私より10歳も年上なのだが、まだ独身で見た目は若々しく、いわゆる「かっこいい」人なので、キャンペーンに参加している若い女性のなかには、明らかにJに心を寄せている子が何名もいる。
そんな彼はこの日、Munosのマーケットの片隅で買った花束をクールに私にプレゼントしてくれた。彼は、外でキャンペーンをするときはいつもスラムの道端で、「本当に安くておいしいフィリピンの食べ物はスラムにあるんだということを教えてあげよう」と言って、3ペソくらいの小さなルンピア(春巻)やゆで卵や寒天などの小さなスナック(pagkain kalie)を奢ってくれる。でも、この日の花束はそれにも増して特別だった。ありがとうJ。日本育ちの私は、バレンタインに花束をもらうのは初めてなのです。日本ではバレンタインといえば、女性が男性にチョコレートを贈る日なのです。2月でも暑いフィリピンでは、チョコレートはすぐに溶けてしまうでしょうけれど。

その晩はJたちと別れ、日頃私が出入りさせていただいている川沿いのスクワッター・エリアの住民組織のバレンタイン・パーティへ。川沿いぎりぎりに住む人たちと一緒に、「ロマンティックなリバーサイド・パーティ」と言いながら、ゴキブリが飛び交う中でカラオケとダンスに興じた。

私はこれまでに日本で何度も素敵なバレンタイン・デーを過ごしたけれど、フィリピンのバレンタインも悪くないと思う。

なお、この日マニラ市は、特別プロジェクトとして「マニラ湾岸のロハス大通りで男女カップルに一斉にをしてもらい、ギネスに挑戦」というわけのわからない企画をおこなった。世界記録を達成し、翌日の新聞には一面で出ていたが、周辺は大渋滞で大変だったという。



※下院議員の公用車のナンバープレートは8なので、見ればすぐにわかるようになっている。


        
 

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