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ポイント還元セールの怪
2002年01月27日(日)


最近のスノーブランドへの集中砲火を見るに付け,ブランドというシステムの持つデメリットを改めて思い知らされる。確かに,ダマす/いい加減な処理がまかり通るような企業体質への評価とは十分に厳しいものでなければならない。去年の騒動では,人も1人死んでいる。

しかし,大多数のマジメな社員や販売関係者の努力が,結果的に非常に簡単に切り捨てられている現実に,少々可哀想な気がしているのはWebmasterだけであろうか。ペナルティーがあまりにも大き過ぎやしないか。

Webmasterはスノーブランドや競合他社に対して義理やコネなどは一切無いのだが,売り場からの撤去が進み,既に入手する機会がメッキリ少なくなってしまった当該製品が,稀に店頭に並んでいたモノを見つけたら,何故か手が伸びていた。

特に買い支えるというような意識は無かったのだが,この行動は今振り返ってみると,日本の乳製品のリーダー的巨大企業が,たった二回の事件で無くなってしまうことへの抵抗感と,その余波がもたらす日本経済への影響度も大きくなると感じ,Webmasterなりに防衛行動を取っているのかもしれない。十合百貨店の破綻もそうだったが,何故そんなにしてまでブランドを憎むのであろうか。

日本経済の防衛を考えた時,確かにウミを出して,さっぱり出来るならば良いのだが,例えば,事件に関係した担当者やトップも含めた人事などを強制的に入れ替えて再出発させるような手法では足りないのだろうか。

〜〜〜+〜〜〜

さて日本経済の話が出たところで,本題に入るとしよう。

コンピュータ/携帯電話などに代表されるIT機器の普及がとりあえず一段落したこと中国の圧倒的な低水準賃金の影響によるデブレーション圧力が発生し,国内需要はすっかり冷え込んでしまっている。

企業がITを導入するメリットと言えば『運用コスト(=人件費)が安くなる』というのが最も説得力があったし,実際,ただこれだけの理由で導入する企業が非常に目に付いた。こういう性格でITを捉え,そういうIT産業が日本経済を牽引するなどとして『IT革命』という神話にまで祭り上げ,国家単位でIT・ITと言っていたのである。実際のITによる産業構造の移行に関する問題点など,殆ど全く取り上げられずに,滑稽なまでに神話化されてしまったツケが,今のデフレになったのだとWebmasterは捉えている。

さて,理由はどうであれ,この不景気/デフレを打破しようと,各方面でいろいろ工夫をして売って行こうとしているのを観察していると,なかなか興味深いものが多い。

例えば,100人に1人はレシートに当たりが出てタダに!・航空券50枚に1枚はタダ!といった売り方が出てきた。

店側からすると,100人に1人タダになっても,平均的には,たったの1%しか値引いていないことになる。しかも某カメラ量販店の場合には,タダになる最高金額まで設定されていて,実質的には1%よりも小さい。航空券50枚に1枚がタダになっても,正規の旅行代理店の販売ルートを経たもの以外はタダにはならないし,平均的な値引率は2%を大きく割り込んでいるとみて間違い無いようである。

それでもインパクトは充分だ。他の方法で実質1〜2%の値引サービスを実施したところで,イマサラ誰も振り向かない。それなのに,この『無料』には結構期待している方も多いのではないだろうか。20人に1人以上が職を失っていることを考えれば,もう少し多く無料のチャンスを与えても良いのではないかと思うのはWebmasterだけかもしれない。ちなみに,現行法ではギャンブル性を抑止する観点から,50人に1人よりも多くの客に割引/無料を行うことは禁止されている。また,その割引額の上限は10万円までと決まっている。

まぁ,工夫して売り込む手法は大いに結構なことである。しかし,次の事例は少々アヤシイ

これは今に始まったことではないが,最近還元率が上がった『ポイントバックカードの手法』の事である。サスガにWebmasterは,この宣伝文句は見逃すことが出来なかった。『10%・13%・15%オトク!!』と言っている件についてでだ。

確かにそれぞれの率に応じてポイントが還元されているが,現金で還元されない点・またはポイントを使用したときにそれに応じたポイントが付かないいう点が重要で,冷静に計算すればすぐに解る事だが,実はそれぞれ『約9.1%・約11.5%・約13.0%オトク』に過ぎないことになる。

理由はこうだ。
店頭表示価格¥5,000で還元率が15%で販売されている品物を例に考える(消費税という間接税は,今回の話に関係無いので割愛する)。この品物を買うには現金¥5,000を店に支払う。カードには750ポイント貯まる。次回の買い物で¥750相当の品物とポイントを交換できる。
→ つまり,¥5,750相当の品物を¥5,000で購入したことになる。
→ ゆえに,以下の計算が成り立つ。5000 ÷ 5750 = 0.8695・・・ ≒ 0.870 = 1 - 0.130

この15%ポイントバックという値引きサービスは,87.0%で買っていることになる。つまり13.0%引きとなり,13.0%しか得をしないことになる。したがって,TV宣伝などで繰り返し叫ばれている『10%・13%・15%オトク!!』は正しくない。是非正確な表現で公正な値引き合戦をしてもらいたいものである。

たかだか1〜2%の誤差と侮る事勿れ。最近は不景気な御時世,定価¥318,000の品物が¥249,800という値札が付けられているのはよく見かけるし,もはや誰も珍しいとは思わないだろう。オマケに『15%ポイント還元』などと書いてあるのだ。

『ポイントバックが15%だから249800 × 0.85 = ¥212,330相当だ。秋葉原のお店では(ポイント無しで)¥213,799だったけど,これよりもオトクだ!』と思ったら負けという意味である。本当は約¥217,217相当なのだ。¥1,469トクしたのではなく,逆に¥3,418も高い方をオトクと思い込ませられた。怖い怖い。

これと同類なものには『一定額をお買い上げ毎に**円商品券を差し上げます』というものがあるが,あれは『**%オトク!』と叫んでいないので,正当な値引きサービスと言える。

ポイント還元に関する景品表示法などの関連法が,どのように運用されているかはWebmasterは詳しくないが,これが仮にクロであれば,近く公取委が是正へ動き出すだろう。
そのうちに『50%ポイント還元!だから50%もお得!』とか,遂には売価と同じポイントを還元するとしたらなんと『100%ポイント還元!だから100%お得!!』などと言うことになるのか。これが許されるのか。

ちなみに現在の公取委のスタンスとして『消費税は当社でサービス!!』は,不当な表示方法の1つであるという。細かいことのようだがルールは守らせるべきだ。なし崩し的に許される領域が広がった時,消費者が混乱するだけである。

これらのことは『イマサラ指摘しても周知の事実』と思っていたのだが,意外に知られていなかったのには少々驚いた。・・・あなたは気が付いていましたか?

これからも真新しい値引きサービスが展開されることと思うが,その都度チェックして見ると面白いかもしれない。

NTT地域による電話線DBが公開へ
2002年01月24日(木)


▼日経コミュニケーション『電話線の情報をWebで無料公開 ADSL向けに東西NTTが2月にも開始』
http://www4.nikkeibp.co.jp/NCC/news_top10/f_ncc2693.html


遂に本家NTT地域会社が,保有している電話線(メタリック線)のデータベース化が完了したようである。過去に電話局から自宅までの直線距離がわかるアッカによるデータベースが有ったが,ADSLで必要な路線長ではなく直線距離だった。(そのことはこちらに書いた。つぶやいた内容とは異なり,得られるデータは直線距離であった)

しかし今度こそ,配線距離が判明するようになるようである。しかも,160kHz時の信号損失レベルまでが検索結果に表示されるようである。損失レベルに関しては,表示されたところで相場がわからないと参考にはならないが,その辺も時間が経つにつれて,各ユーザによって公開されて,解決することだろう。

ちなみにADSLの使用帯域は30kHzから上限がG.lite(1.5Mbpsタイプ)で550KHz,G.gmt(8Mbpsタイプ)で1100kHz。局舎から離れていて通常のADSL方式では通信が不可能な場合に提供されるReach ADSLタイプ(※)の場合で,おおよそ300kHzだ。

※リーチADSLとは,いくつか種類があり標準規格がないらしいが,ここではAMラジオやISDN起因のノイズが乗り易い高域を使わず,中低域のみに専念することによって,確実な接続をするタイプのものを指している。

期待大であるが,問題はデータベースに登録されているデータの精度になってくるだろう。まぁ,無いよりは有ったほうがマシで,参考になるありがたいデータになると思われる。2月からWeb上で無償公開ということで,その日が待ち遠しい。

〜〜〜+〜〜〜

そう言えば,我が家は公衆回線を引いていない。先日引っ越した際にADSLだけ開通させたので『ADSLのType2』というものになるのだが,データベースの検索には電話番号が必要だという。
恐らくType2の場合は,検索対象外になってしまうのだろう。

ちなみに,Type2の開通で立ち合い工事を行った際,工事技術者のお兄さんがテスターを当て,何やらNTT局舎側にいるもう一人の技術者と携帯電話で数値などを確認したりしていた。DC458Ωなどと言っていたのを覚えている。これは恐らく直流時の抵抗のことだろう。我が家はNTT局舎から直線で700m程度だが,まぁどちらかと言えば優秀な方であるということであった。

800Ω以上だと,ADSLでの通信は厳しくなってくるとお兄さんは答えてくれた。160kHz時の損失レベルも知りたくてその場で伺ったのだが,そのときは明快な答えを避けられてしまった。相場などが判明したら,このページでも追ってレポートしたい。

地上波デジタルTV延期必至で対応機はいつ買うか
2002年01月23日(水)


最近の放送行政の混乱によって,デジタルTVを購入するタイミングを見計らうことは,非常に困難な情勢になってきている。少なくとも,現状の進捗状況や技術的な背景などを知っていないと,よいお買い物は出来ないのではないか。

そこで今回は,複数の要点に分けて考えてみることにする。

●地上波デジタルは計画が遅延している
▼毎日インタラクティブ『地上波デジタル放送、要対策世帯が倍増』
http://www.mainichi.co.jp/digital/housou/200111/20-2.html


地上波デジタル化は,当時の郵政省(現総務省)が要アナアナ変換地域の見積を誤り,想定予算は当初724〜852億円だったものが2000億円以上になる見込みだと全国地上デジタル放送推進協議会が昨年11月に発表した。

移行スケジュールも併せて見直さざるを得ない状況で,2003年度三大都市圏開始・2006年度全国開始・2010年度現行アナログ放送廃止だったものが,三大都市圏の2003年度中の開始・2006年度中の全国放送開始は絶望的と言われている。

そもそも何故アナアナ変換が必要なのかと言えば,地上波デジタル放送は,現在で言うところのUHFのテレビ放送の周波数帯域の一部をデジタル用に再割当して開始されるため,該当する現行UHFテレビ放送局は,チャンネルをシフトするか,コストのかかる地域丸ごとケーブル化を実施しなければならない。

今回の誤算は,このケーブル対策が必要な地域が当初予想よりも増えてしまったことによる。デジタル化される地域に隣接している地域で,新たに発生する周波数干渉を回避するためのアナアナ変換の対応を甘く見ていたことが原因だ。玉突き的に要対応地域が増えていき,2000億円という数字が出てきてしまった。

現在,総務省は他の方法を検討しているという。アナアナ変換ではなく,当該地域の各戸に直接デジタルSTB(セットトップボックス)/デジタルチューナーを配ってしまうという太っ腹なものだが,実は地域丸ごとケーブル化するよりも安いのだそうだ。


▼総務省『片山総務大臣閣議後記者会見の概要 平成13年11月22日(木)』
http://www.soumu.go.jp/d-news/2001/1122.html

▼総務省『もうすぐ全ての放送がデジタル化されます』
http://www.soumu.go.jp/joho_tsusin/whatsnew/digital-broad/index.html



このことから,総務省は当初のスケジュールに相当こだわっていることがお解りいただけるだろう。理由は予算の他に,既に韓国・米国は地上波デジタル放送が開始されているからのようである。地上波放送のデジタル化が遅れれば,日本のコンテンツのデジタル化や民生機器の開発販売面で国際競争力が低下する(米国はアナログ方式のケーブルが普及している為,デジタル化された恩恵が解りにくく,デジタル対応機が普及していないようであるが・・・)。

このように地上波デジタル化が大幅増額/遅延が確定的になっている中,BS/CSのスケジュールは順調である。BSのバックアップ放送衛星系が不調だが,強気で強引な運用を続けているため,今のところスケジュールに大きな影響出すまでには至っていない。
つまり,BS/CSの衛星系は予定通りにサービスインして放送を開始,対応機器もスケジュール通りに発売されるということになる(ただし後述するように順調なのは運用スケジュールだけで,BSデジタル放送の普及に関して失速してしまっているのが気になる)。


●地上波デジタル化のメリット
さて,こんなにも『もつれたスケジュール』を敢行してまで地上波放送をデジタル化することに対して,果たして意義があるのかという一部の声も聞こえてくる。そこで軽くおさらいしておこう。

まず主に言われている恩恵だが,現在逼迫している電波の周波数帯域を,映像信号などを圧縮して効率的に使用することが可能(使用効率は,現行と比べおよそ3倍程度)で,さらに,コンテンツの蓄積型端末などの新たなサービスが創出される・ノイズに強いなど,デジタル化されたメリットは多数ある。

では,デジタル化が容易な衛星系だけで済ませ,これほど巨費が必要でかつ移行が面倒な地上波デジタルは,これらの恩恵をも上回るメリットがあるのだろうか。・・・地上波はアナログで良いように見える。

だが実は,それ以上に『ゴースト対策』という面が大きいのである。

これから都市が垂直方向に伸び,電波塔からの直接波がアンテナまで届きにくくなるのは目に見えている。無線LANにも採用されている最近話題の変調方式『OFDM(直交周波数分割多重変調)』方式を採用し,複数の任意の経路を通過してきた信号でも効率良く復調できるという特徴を生かすからである。

これまでのアナログ方式のTVでは,ビルの反射などによって複数の経路を通過してきた信号は,ゴーストという形で画面に現れてしまう。高価なGRT(ゴーストリダクションチューナー)を搭載すると若干改善されるが,限界があった。

OFDM方式とは,デジタル時代に相応しい変調方式である。想定される遅延時間よりも充分に長い変調時間を与えることによって,複数の時間差のある信号を同一のものと見なし,変調時間が長いかわりに複数の周波数帯に分散/多重化された信号成分を,数学の力によってキレイに矩形整形された波形を取り出すことが出来る。つまり反射波をも復調のエネルギーにすることが出来るようになったことで,これまで求められていたような受信アンテナの指向性の必要性は薄れ,若干簡易なもので済むようになることを示している。

また,OFDMのような方式の電波信号は,発信側が同期さえしていれば,発信源を1つに限る必要すらない。複数の電波塔から発射された同じ周波数の電波を受信して,それらを合成すれば,強力な1つの電波を受信したときと同じになる。

従って,電波障害地区や僻地へ再送している中継局が同じ周波数を使用することも可能になる。基地局間を同期させるので隣接する地域で同一の周波数で放送しても干渉しないことから,これまで再送用に用意しなければならなかった周波数が別用途に解放されるようになり,それでなくとも電波の使用効率が良いOFDM変調方式は,さらに効率を改善することが期待できる。


▼OFDMの技術的で解りやすい解説ページ『OFDM add 9』
http://y7.net/ofdm/

(茨城大学大学院生 新間氏による)


これらは地上波デジタル化にしかあり得ない恩恵であって,この点で実は衛星系よりも地上波系の方がメリットが大きいことが解る。

また,OFDM方式採用の副産物的な効果として,指向性の弱いアンテナを装備している移動体での受信が容易になることもあり,GPSや国土交通省のITSなどとも絡み,インテリジェントな移動体通信が期待でき,様々な通信サービスが創生される見込みだ。

最近では,通信業界の規制緩和と技術革新の波に乗って,光ケーブルによる映像配信がもてはやされているため,『限りある電波リソースを大量に消費する電波放送は時代遅れで,地上波デジタル化のために巨費をかけずに,その分でFTTHなどに転化して推し進めればよい」とする意見も聞く。確かにFTTHやIPv6など新しい様々な技術によって,映像サイマルキャストが出来るようになるだろう。

しかし,総務省の『STBを配ってデジタル化』をした方が安いという試算でも明らかなように,今見えている技術をベースに考えると,地域丸ごとケーブル化(或いは光化)する場合よりも経済的なのである。IPv6などの現在考えられる新しい技術が実用になっても,物理的な配線や交換機を必要としない電波で放送した方がFTTHよりもよっぽど安価なのだ。映像を配信する為のコストが安ければ,コンテンツに割り振られる費用が増え,コンテンツ品質があがる。

現在の技術をベースにした場合,電波を使用した放送という形態は廉価に大量の情報が配信できるということに変わりは無く,従って,巨費に見えた移行費用は,相対的に見れば安価。つまり,地上波放送のデジタル化の流れは必然なのである。


●地上波デジタル化の政策と政治的要因
・・・と,ここまで書いたが,上記は政府によるデジタル化の大義である。逆にいえば,あくまで政府の論理の域を出ていない。確かに理屈は解ったが,計画が遅延して多額の費用がかかるのに,地上波をデジタル化する必要性は本当にあるのだろうか?という疑念が生まれることも否定できない。

デジタル化を推し進めなければならない要素,つまり現在,必要に迫られている問題点は『多チャンネル化ニーズによる周波数帯逼迫』だけである。他は国際競争力の強迫観念,及び附加価値発生による『産業創出の政策』に過ぎない。あくまで附加価値であって,費用を負担した受信者にとって直接の形で恩恵が受けられるわけではないところが,成功するかどうかの重要な点となる。

国際競争力/産業創出の必要性,或いはそのために必要な費用が発生することを政府は国民にアピールしているのか。いや,アピールしたところで負担の同意は得られないだろう。附加価値だけではダメで,国民は必要に迫られていないものの費用を負担するハズが無いからである。特にデフレ不況下ではその傾向は強い。

Webmasterは上記の政策は支持している。しかし,その必要性はごく一部の技術者や関係者など,限られた者のみが意識しており,一方,多くの負担を強いられる大多数の人々にとって,この御時世,現状を維持することに価値があると考えているのではないだろうか。したがって,なかなか政府はアピールできないでいるのだ。

普及せずにターゲットが限られてくると,デジタル方式のコストは,1台当たりの価格にしわ寄せが出て,さらに視聴者にとってペイしない方式になり,普及しないというダメなスパイラルになる。コンテンツも集まりにくくなり,ニ重苦になっていく。

大本営発表の域を出ない現状では,地上波デジタルは失速してしまうことも否定できない。そもそも衛星系のデジタル放送も,認知度不足・キラーコンテンツ不足・対応チューナー1台10万円などの理由から失速している。当初計画の1000日で1000万世帯達成は,10分の1にも遥かに及ばず,文字通り夢の彼方に消えた。総合放送が主なBSデジタル放送が,高価なチューナーではペイせず,専門性が比較的高いCS放送と一体にならない限りは普及は難しいだろう。


●多チャンネル化とは?〜総合放送と専門放送〜
現行首都圏の地上波放送で総合放送局数6chでは足りない感は拭えない。いや,今までの価値観で言えば,とても充実しているとも言えるが,6局で繰り返し放送されるコンテンツは,既に硬直化しているようにWebmasterには見える。それは総合放送というコンテンツ形態の限界ではないかと思われる。

総合放送のチャンネルが増えて多チャンネル化しても,魅力はそれほど増えないだろう。失速気味のBSデジタル総合放送を尻目に,専門的な放送が比較的充実していて手軽に始められるCATVやCS放送は,本格的に普及し始めている。もちろん業界の努力やインセンティブ販売効果もあるだろうが,多チャンネルの魅力が総合放送ではないことは明らかだ。

専門放送は,総合放送と比較すると,積極的に情報を得たい視聴者にとってメリットがある。情報/放送に対して受身ではなく,どちらかと言えば情報を取りに行っているのだ。逆に言えば,総合放送は情報が垂れ流されても見ることが出来る内容のコンテンツになる傾向にあると言える。

例えば,現在最もアグレッシブに情報を取りに行くことが向いている放送/通信メディアといえば専門放送ではなくて,もちろんインターネットだ。積極的に検索しクリックを繰り返さないと目的のコンテンツに到達しないし,しかも大半は音声や映像ではなく,静止画と文字列によるものが殆どなため,情報を得るためにはある種の努力が必須だ。観ているだけ/聴くだけではダメで,読まなければならないからである。

インターネットは,その努力に見合うだけのコンテンツが存在する。そうでなければ,ここまで普及しなかった。積極的に情報を得ようとしている人々にとって,インターネットは魅力的なコンテンツがあったわけだ。それはインターネット上のコンテンツが専門放送よりも専門的で,かつ具体的なものが提供されているからに他ならない。

そう言えばインターネットでは,プッシュコンテンツの試みがことごとく失敗している。インターネットが総合コンテンツ的なものには向かないことの証拠であろう。現状のインターネットはTVにはなれないことは,既に書いた

さて,つまり専門放送は,総合放送とインターネットの中間に位置するコンテンツが向いていることが言える。多チャンネルになったとき,積極的にチャンネルを変える作業が必須になり,そのため,積極的にならざるを得なくなるからかもしれないが,インターネットの『検索/クリック/熟読』のサイクルよりは遥かに手軽だ。その意味で専門放送は現代的である。

現状の放送よりも詳細な情報を得ようと考えたとき,総合放送だけでは足りない時代がくる。もちろん総合放送を否定しているのではない。総合放送と専門放送が一体となったとき,はじめて多チャンネル化のメリットが出てくるのではないかとWebmasterは考えている。


●結局現状では東経110度CS放送とBS放送で妥協か
▼日経ニューメディア『東経110度CS放送を受信できるテレビ3機種,三洋電機が3月1日から順次発売』
http://nnm.nikkeibp.co.jp/nnm/2002/01/NNM20020115_2.html


BSデジタル放送を受信するためだけにチューナーを購入するということは割が合わない。余りにも高価だからだ。特に総合放送だけでは満足できない/経済的に余裕がないWebmasterには買えなかった。

そこへ,このような受信機が登場したのである。なるほどと思い,今回つぶやく動機になったのである。

地上波とBS・CS・CATVまでが1つのチューナーに統合され,全てがデジタルになったそのときに,対応機は次第に販売台数が伸びて行き,価格がこなれ普及するというのが本来の姿ではないだろうか。それまでは,今回BS/CSだけでも統合されたことで,失速気味のBSデジタル放送が持ち直し,だましダマシ普及していくような我慢の日々を送るしかないが,悪い選択肢では無いだろう。



地上波デジタル放送開始の延期が確実視されている現状で,お金に余裕があり地上波デジタルの統合まで待てない向きには,専門放送の多いCS放送と統合されたこのような受信機が良いかもしれない。

TVは10年は稼動する(させる)機械である。他のデジタル方式の製品に比べて寿命が長いのだ。だからこそ現在の放送過渡期の買い替えのタイミングは難しい。地上波デジタル延期をにらんで,今買い替えを考えているTVがご家庭にあれば,この際に買い替え実行をしておくのも手だ。今回の地上波デジタルの延期で,既に寿命が近いTVを地上波デジタルまで持たせるのは,難しくなってきたかもしれないからだ。

映像配信ビジネスは普及するか
2002年01月09日(水)


インターネットを利用したビジネスが拡大しつつあるが,まだ特定分野に偏っていて一般的に普及しているとは言い難いものがある。

簡単に考えて,ネット上でのビジネス普及の最もメジャーな障壁と言えば,
・小額決済方式の乱立(=標準方式不在)
・ビジネスモデルの確立

の2つではないだろうか。

クレジットカードによる決済は,確かに標準的ではあるのだが,しかし,店舗側での手続き/会社審査やSSLを導入する為のコストなど店舗開設のための敷居が高いため,大規模なサイトなどに限られてしまう。
また,クレジットカードの番号を送信する際に,ユーザが抵抗を感じることもあるだろう。

WebMoneyなどのプリペイド方式も,いつ買うか判らない買い物のために,あらかじめコンビニエンスストアなどでカードを買っておかなければならない上に,十数桁に及ぶ番号を入力しなければならないなど,なかなか不便だ。

ネットバンクが普及して,人々が振り込みに対して『気軽に行える』というイメージを持つまで,解決は待たなければならない。

いっそのこと,日本銀行が現在の紙幣(日本銀行券)・硬貨の他に『電子硬貨(日本銀行カード)』を発行できるようになれば問題は無くなるのだが・・・。


問題は『ビジネスモデルの確立』の方である。

そもそもインターネットが普及したのは,あらゆるコンテンツが様々な情報ソースによって提供され,検索など多様な手段で手軽に得ることが可能という理由が存在したからである。(一説には,VHSやCD-ROMのようにスケベコンテンツが普及を加速させたというのがあるが,それはこの際置いておこう)

もちろん手軽という言葉には,無料という意味が重要であり,我々はインターネット上のコンテンツは基本的に無料というものに慣れてしまっている程である。『ここからが有料』とか言われると,ユーザはそこで諦めて他を探すのが普通だ。
多少面倒でも,かつ金を支払ってでも,なおかつ多少のリスクを覚悟してでも欲しいような,非常に魅力的なコンテンツの場合には購入することも考えられるが,これは既にかなり限定されたケースなのである。

つまり,スーパー/ディスカウントストアのレジ前にある『乾電池』や『米がくっつかないシャモジ』並に,うっかり買ってしまうような品物がネットでも同様に売れないと,ネットでのビジネスが普及しているとは言い難いのではないか。


さて,ではネットで何が売れるのか。
ネット草創期の頃,『コンテンツ』というボキャブラリが普及し,『音楽配信や新聞コンテンツサイト,PCソフトやゲームタイトル配信などで新しいビジネスが発生し,これがまさにIT革命であり,これらのビジネスが成長し時代の大きな牽引力になる』などと持てはやされ,当時の人々はネットの未来をコンテンツビジネスと結びつけて信じたのである。
しかしこれらのビジネスがほぼすべて実験的なものに終始し,結果的にはことごとく失敗しているのを目の当たりにした。

『コンテンツは基本的に無料の原則』がある限り,情報料は広告でのみ成り立ち,すなわち広告収入以上を期待するコンテンツビジネスにとって,ネットは実は非常に不利なのである。あまりに簡単にたくさんのコンテンツにアクセスできるネットは,コンテンツを売り物にすることが難しいという逆説的な結果となっているのは少々興味深いところだ。

こう考えると,逆にネットはモノかサービスを提供するために利用するのが向いているということがイマサラながら解ってくる。ネット上では得られないモノやサービスのことである。ユーザはネット上のページで,モノやサービスの存在や価値を知り,それに対して対価を支払う。楽天(物品販売)やYahooオークション・オンライン対戦ゲーム(サービス提供)などはその好例になっている。

一方,『ビデオオンデマンド』に代表される映像配信ビジネスは,ブロードバンド時代の到来でこれから普及するなどと言われているが,果たして本当だろうか。CM広告以上の収入を得るのが難しく,レンタルビデオのように普及するかどうかは疑問の残るところである。

ネット草創期のコンテンツ神話が,ブロードバンド元年と言われた近年,またしても登場しただけではないだろか。

TVと同じようなCMによる広告ビジネスモデルならば十分に可能性がありそうだと思われるかもしれないが,一概にそうでもない。現在の技術では,大量に映像配信することは,かなりの高コストが約束されているため,メジャーなタイトルは必然的にTVが断然有利になってしまう。また,コンテンツをマイナー側に振れば,小規模で開始できニッチに対応でき,それこそ低コストで運用できるかもしれないが,いずれにしてもマスメディアに成長する可能性は低い。

マスメディアに成長することが期待できないメディアには,大きな広告効果が期待できないとされ,それなりのコンテンツしか提供できず,結局は実験的なものに終わると読む。メジャーTV用のコンテンツ予備軍としてのみネットは生きて行けるのかもしれない。

ネットビジネスとはコンテンツビジネスのことでは全くなく,むしろ逆の『モノ or サービス』の時代が当分続くことであろう。ネット時代の敗者がコンテンツビジネスになってしまう可能性が見えてきているのである。

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