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コミュニティ・オーガナイジングとアクティビスタ ♯11
下院議員とのシンポジウム その1
2003.12.17(水)
パシグ川とその支流の河岸10メートルを政府が公的目的に使用できる「10 Meter Easement(10メートル治水権区域)」と定め、該当地区に居住する住民は「スクワッター(不法滞在者)」であるとして立ち退かせる計画を進めている、パシグ川再生事業(Pasig River Rehabilitation Project)については、#2#3の「リーダー・トレーニング・セミナー」にも記述した。
パシグ川というのは、ラグナ湖からマニラ湾に向かってマニラ首都圏を東西に横切る形で蛇行する川なので、このプロジェクトによって影響を受ける世帯は、マニラ市だけではなく、パシグ、マカティ、タギグ、サンホワン、マンダルヨン、ポテロスなど複数の地方自治体に広がっている。また、再生事業はパシグ川の本流だけでなく主要な支流にも適応されることになっているので、パシグ川から遠く離れたケソン市などにも影響は拡大する。各地域でそれぞれに活動する住民組織は、より強いアドボカシー活動を行うために、COM(Community Organizers Multiversity)の支援を受けて、「Ugnayang Lakas ng mga Apektadong Pamiliya sa Baybaying Ilog Pasig(ULAP、パシグ川沿岸の被害家族の強い連合)」という連合体をつくっている。

9月に、パシグ川の支流に近接するケソン市のあるコミュニティの立ち退きが強行されて以降は、現在まで、特に立ち退きのニュースは入っていない。「選挙前になると立ち退きは行われない」というのは、もはやこの国の「常識」である。しかし、来年5月の総選挙の終了後は、再び大規模な立ち退きが行われる可能性は高い。こうしたことから、ULAPは、「No to 10 Meter Movement」という、より強固で効果的なアドボカシー活動を開始することを考えてきた。

そこでCOMが提案したのが、「下院議会を利用する」ことであった。
フィリピンでは1998年に、下院におけるParty-List Systemが導入された。これは、下院議席(任期3年、4選禁止)のうち、20%にあたる議席が「Marginalized Group」から成るParty List組織から残りの80%は、選挙区ごとの候補者から選出されるという、日本の小選挙区比例代表性にも似た制度である(※)。
Party Listとして登録のできる組織は、Partyと名づけられてはいても、大統領や上院議員の属する一般的な「政党」とはまったく別物である。あくまでも「Marginalized Group」のみが登録を許されている。
このシステムの最大の特徴は、NGOや「極左の組織」「労働運動団体」なども、選挙管理委員会に登録さえ行えば、Party Listに名を連ねることができる点にある。このシステムは、NGOや、地下活動をしてきた左派系の組織までもが正当な手段を踏んだ選挙活動や議会活動に参加する機会となった。各団体は、Party List票全体の2パーセント以上の票を獲得すれば下院に1議席をもつことができる。限度は3議席。しかしながら、2001年の選挙では100を超える組織がParty Listに登録したために票は割れ、定められた「全体の2%以上」の票を獲得した代表者で占められたParty Listの議席は52議席中、わずかに12議席に過ぎず、残りは空席となったままだった。

左派系の「AKBAYAN」は、2001年の選挙で2議席を確保したParty List Organizationである。フィリピン左派は1990年代前半のフィリピン共産党の分裂を筆頭に次々と分裂を繰り返してきたが、AKBAYANは、分裂した左派のいくつかが再び連合して結成したグループである。
COMのオーガナイザーの多くは左派系の活動家出身なので、当然、分裂後も左派の各所に計り知れぬほどの人脈がある。AKBAYANもそのひとつ。AKBAYANの活動家の一人であるJ氏は、COMのオーガナイザーBの大学時代の先輩で、「ともにアナーキストの学生団体で闘った」らしい。組織が分裂し、Bは左派運動を脱退したいまも彼らの関係はきわめて良好で、JはCOMにトレーニングを受けに来たり、COMのボランティアとして働いたり、時には90年代初頭の「仇敵」であった急進左派「Bayan」グループ(※)の活動家であるBの弟と一緒にCOMのボランティアとして働いたりしている。

詳しいことはあまり教えてもらえないが、ともかく、COMはそうしたルートを使って、AKBAYANの2人の下院議員、Mayong Aguja氏とEtta Rosales氏にコンタクトし、ULAPの掲げる「No to 10 Meter Movement」運動を支持してくれるように手はずを整えた。AKBAYANとCOMとULAPとは何度もミーティングを重ね、
・下院議員の2人に下院委員会で公開質問をしてもらうこと
・12月17日に下院の一室で、AKBAYANの2人の議員、ULAPのリーダーたち、そして「パシグ川再生事業委員会」ディレクター、弁護士による公開シンポジウムを行うこと

が決定された。つづく


※ 1987年憲法によると「下院は250議席以下で任期3年、うち20%は法律の定めるところにより party listを通じて、残りは憲法別添の定める選挙区(小選挙区制)により選出される。政党名簿による議員に割り当てられた議席の半分は、法律の定めるところにより、労働団体、農民団体、都市貧困者団体、地方民族団体、婦人団体、青年団体その他宗教団体を除く法律の定める団体に、選任または選挙による職として割り当てられる。」

※Bayanグループは、女性団体、農民団体、労働団体、都市貧困者団体などいろいろな分野のグループを含んでいる。Military Group、急進左派と称される彼らも、「Bayan Muna」という名前のParty List Organizationを登録して議会政治に参加している。Bayan Munaは現在下院に最高限度である3議席を確保しており、さらにその限界を超えるために、女性団体ガブリエラなどの傘下グループもParty Listに登録して、Bayanグループ全体としての議席数を増やすという戦略をとっている。



        
 

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